訃報が重なる

 

『ER』看護師マリク役、ディーザー・Dさん死去 55歳

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綿引勝彦さん死去 膵臓がん、75歳 ドラマ「天までとどけ」シリーズなど

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五郎蔵さんが亡くなった悲しみと、あのマリクがという驚きと。

 

 

綿引さんといえば真っ先に思い出されるのは『鬼平犯科帳』の五郎蔵だ。
主な密偵の中では最後に加わる人物で、他の密偵同様、人情に篤い人柄だった。
強面の人相と、深くて重みのある声は元盗賊を演じるにはぴったりの素質に思えた。
長谷川平蔵の配下になるまでを描いた「敵」をはじめ、「密偵たちの宴」や「ふたり五郎蔵」など印象に残る登場回はいくつもある。


2014年に密偵仲間の粂八を演じた蟹江 敬三さんが亡くなったときもそうだが、思い入れのある登場人物を演じた方の訃報は、ひどく寂しい気持ちにさせる。それだけ『鬼平犯科帳』が古い作品になったとはいえ、すでに数多くの出演者が鬼籍に入られている事実が悲しい。

 

思えば、馴染みのある役者さんもだいぶ少なくなってしまった。
すでに津川 雅彦さんや渡 哲也さんなど昭和を彩った方々が大勢この世を去っている。
それだけ自分が年をとったのか。
これでまた好きだった芸能の世界がまた一歩遠くなる。
摂理とはいえ、やはり寂しい。

 

『ER』の出演者ではグレン・ヘドリー (アビー・キートン役)が2017年に亡くなり、ウェンディ役だったヴァネッサ・マルケスが2018年に警官に射殺されている。
はじめはウェンディが病んでいたのを知らなかったので、なぜ空気銃を手にしたのかわからなかったが、去年Youtubeに公開された警察の映像記録によりその理由があきらかになった。

 

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警官たちは専門家を同伴して医療機関の支援を受けるように説得していたが、時折震えるように発作を起こしている彼女はそれを拒み、最後には「殺して」と空気銃を取り出してしまう。
なぜそこまで追い込まれてしまったのかはわからないが、それでも冷静に説得を続ける警官たちに銃らしきものを向けて近付いたため発砲されてしまった。

 

状況から見て彼女の目的は警官に撃たせることだったのだろう。
映像には『ER』での明るい姿はどこにもなく、あまりの変わりようが気の毒でしかなかった。

 

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キートン先生は幸田直子さんの声が絶妙だったのでハッキリとした印象が残っていた。
ずいぶん前に『ER』を見返していた時、ふと彼女の名を検索すると62歳で急逝されたことがわかって落ちこんだことがある。

 

もともとは若い頃に『ER』を見ていたため、幸田さんの透けるような声だけでなくキートンという一見すると思いやりのある優秀な小児外科医が、実は意中の相手には小悪魔のようにふるまってみせたり、野心的で優れた手腕をもつ教え子を、時には一喝しながらも諭すような魅力にあふれた人柄だったので当時から惹かれていた。

 

普段の声がもう色気が溢れているのに、カーターと良い雰囲気になり「キートン先生」と呼ぶ彼を見つめながら「アビーよ…」と囁き返す声は、この人凄いなと笑ってしまうくらいの美声だったので忘れようがない。

 

グレン・ヘドリーのたおやかさと幸田さんの声が見事につりあう登場人物だった。

 

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マリクは『ER』の初期から看護師として登場していた。
仲間と冗談を言い合ったり、からかったり、ラップを愛する気のいい青年の役だった。
ただ人種差別には非常に敏感で、救急隊のシェップに悪態をついたり、誰かのなにげない言葉に反応することがしばしばあったように思う。

 

55歳。
急な病なのかどうかまだわからないが、亡くなるには早すぎる。

 

ふと気付いたので調べると、今日は姚貝娜の命日でもあった。

 

たまたま同じ時代を生きることになって、誰かの記憶に良い思い出を残すことができたのなら、それはきっと誇りに思っていいんじゃないだろうか、と勝手ながらに思ってしまった。

 

ご冥福をお祈りします。