映画 『しなの川』 感想

1973年作。

監督は『砂の器』や『八つ墓村』などの野村芳太郎
前の『疑惑』も野村監督作品。
ネタバレあり。

 
一言でいえば由美かおる劇場だった。
というか単に脱がせたかっただけじゃ…

竜吉に感情移入すると気の毒に感じる物語だが、なんとなく結ばれないんだろうなあということには早い段階で気が付く。身分の差以上に雪絵を取り巻く環境が竜吉には荷が重すぎるので、いずれ破局するのだろうと。

その予想は間違ってはいなかったけれど、まさか別れの列車の中であっさりと次の男に出会うとは思わなかった。早いよ雪絵。

その後の顛末も若さゆえに、といった内容のわかりやすい展開が続き中盤へ。
うっかり誘いに乗ってしまう竜吉も悪いが、その純情さが竜吉の良いところなので憎めない。最終的に振り回した雪絵は自分なりの幸せを見つけ、振り回されるだけだった竜吉は失意のうちに日本を去る。女は忘れているのに男はいつまでも未練を残すという描写は昔からセオリーだったようだ。

『疑惑』では情けない姿しか見られなかった仲谷昇だが、今作では旧家の厳しい父親役が見事にハマっていて、一部、妖しい雰囲気を漂わせる場面も違和感なく演じるのは流石だ。

ジェームス三木が脚本、音楽は冨田勲という点も良かった。
が、それよりなにより映像そのものが楽しめた。
フィルムには昭和の日本が色濃く残っている。
今、これと同じように撮影することは不可能だろう。
すでに風景や人物の大半が失われているのだから。
どうしようもないことだが、残念に思う。