『返校 - Detention - 』感想

 

これはしばらく引きずりそうだ…。
要所の音楽と演出が特に見事で、ヘタな映画よりも心に突き刺さる。

 

www.youtube.com

 

以下ネタバレあり。

 

ずいぶん前に買って手付かずだった台湾産のホラーゲームを始めた。
この前の『VA-11 Hall-A ヴァルハラ』も終わってないのに。
相変わらず気まま。

 

今まで積んでいたのはホラーが苦手なため。
なら買わなければいいのに、とは思ったがそれ以上に『返校 - Detention - 』の雰囲気に惹かれていた。セールで600円くらいだったのもある。

 

まだ序盤だが独特な薄暗い世界は好みだ。
とりあえずグロさとオバケに我慢しつつ謎解きに四苦八苦している。
細かい演出や文化の違い、時代背景など面白い部分は多い。
ただ、なんとなく救いのない話なんだろうな、という推測はできてしまう。

 

ホラーなので音楽も気味の悪いものが多いが、たまに悲しみを誘う曲が流れることもあって、その時はこの薄暗い世界がとても輝く。

 

さて、この時計はどうしろというんだろう。
そのまま弄ってもうんともすんとも言わない。
父親の写真だけ横向きだから縦になっていた場合を考えて合わせるのか…?

 

 

終わった…。
5時間程度。
最終章の選択肢から全て正解を探すのは少し面倒で、間違える度に拍手で迎えられるのはツラかったが、正解にたどりつくと一気に感情の波が押し寄せてきた。

 

想像以上に救いのない話で、やるせない筋書きに胸が締め付けられる。
それでも終盤にかけての静かに沈んでいく世界は特に好きだ。
この作品は最後まで音楽やビジュアルなどの演出がよくできている。
ふたつあるエンディングのうちバッドと思われる方にも意味があって、彼女の身に何が起きたのかを知る大事な場面がある。むしろこのエンドを見ていないと正規のエンディングが消化不良になるため、一度は見ておく必要があるだろう。

 

そういった仕掛けや雰囲気を最後まで楽しめたのは何よりだった。
トレイラーの曲を劇中で使ってないのは少し惜しい気もするが、SteamではOSTも売っているのでいずれ買おうと思う。

 

気になったところもある。
これはやむを得ない部分というか、この手の作品は出来事をハッキリ描写しないことがあって『返校(Detention)』もそうだった。断片的な情報からなんとなく推測するしかないため人によって解釈が異なってしまう。そこが魅力なのかもしれないが、想像力が豊かではない自分にとってこれはちょっと厳しい。頭の悪さはどうしようもないとしても、モヤモヤした部分が残ってスッキリしないのは好ましくない。
後を引きずるから。

 

変に勘違いをして取り返しのつかない通報をしたということだろうか。
チクって表彰されたあげくに虐められたということだろうか。
最終章、最初の問いの部屋で換気扇を触ったときの音は何だろうか。
あの老婆は母親ということだろうか。
違うのなら老婆はいったい何者なのだろうか。
母親はどうなったのだろうか。
墓はどこにあるのだろうか。
そこを訪ねたのだろうか。
無銘の墓に線香を供える場面はないのだろうか。

 

結局のところ、そんな疑問は好きなように解釈するしかない。
スッキリはしなくても、トゥルーエンディングで悲しみの果てに訪れる儚くも美しい光景を目の当たりにできれば、それで十分だろう。

 

soundcloud.com

 

クリア後に「忘川河の伝説」を解説されている方のブログを読んで、また胸が苦しくなっている。

 

忘川河とは日本でいう三途の川。
そこには此岸と彼岸を結ぶ奈何橋という橋が架かっているという。
橋には孟婆と呼ばれる守り人がいて、橋を渡る者には孟婆湯を飲ませるそうだ。
孟婆湯を飲んだ者は全ての記憶を失い、輪廻の道に戻ってゆく。
だが、中には恋人などを想い続けて忘れることを望まない者もいる。
孟婆はその意思を尊重して飲まない者の体に「印」をつけるそうな。
そして、千年の過酷な試練を課された後、輪廻へと戻ることが許されるという。
試練に耐えた者は体に「印」が残ったままで転生し、記憶に残る想い人を探すそうだ。

 

都合よく抜粋し解釈させていただいたが、向こうにはこういった伝承があるらしい。
胸が苦しくなったのは、この話を「彼女」に当てはめてみるとハマり過ぎるからだ。

 

天国にも地獄にも行けずに彷徨い続ける気の毒な娘だと言ったあの老婆が「孟婆」だったとしたら。罪の意識から「許されたくない」と孟婆湯を口にすることなく自らに過酷な試練を課したとするのなら。あるいは「彼の隣こそ、いるべき居場所」と己の想いを貫こうとした結果だとしたら。


そう都合よく考えてしまうと、この作品は、千年の責め苦にもがき続ける「彼女」の姿を映したものだったのかもしれないなと、ひどく揺さぶられてしまう。これからも「彼女」は繰り返し耐え続けるのだろうか、それとも「彼」が現れたことで救われる道ができたのだろうか。忘れたはずの疑問がまた鎌首をもたげてきて心をくすぐる。

 

soundcloud.com

 

評価が高いこの作品、つい先日映画が公開されたそうだ。

 

www.youtube.com

 

原作の音楽を使っているのなら是非見てみたいが、内容がただのホラー作品になっているのなら冷めてしまうだろう。

 

ゲームとはいえ、素晴らしい作品に出会えてよかった。